ー「なぜ『慶應義塾體育會競走部』に入ったのでしょうか?

理由は多いですけど、5つほどあります。1つ目は、勉強も陸上も頑張れる環境があったからです。

もともと医者になろうとしていたんです。高3の頃は慶應か国立に行くか選択肢がありました。

国立に行けば医者になるための勉強で忙しくなるので陸上をとるか、勉強をとるかという状況で、スポーツをやりたいという気持ちもありつつ、勉強もしたい、

どっちもできる環境があるのは慶應だなと思いました。

スポーツだけにしたくなかったけど、スポーツもちゃんとやりたかったから自分にとって慶應に行くのが一番いい選択肢でした。

2つ目は、やりたいトレーニングがあったからです。

(母校は)強豪校ではなく練習時間が少なかった上に、

ウエイトなど、ちゃんとしたトレーニングをしたことがありませんでした。

そのため大学では、強豪校出身の選手と一緒に練習を始めてもついていけないと分かっていました。

だからこそ、一人で、自由にできるという点で、

慶應だったら自分のペースでできると思いました。

3つ目は、指導者の下を離れたかったからです。

高校時代、赴任してきた指導者がたまたまやり投げの先生でした。

長崎にいれば競技を続けられる環境にいたけれど、競技者として一段階上に上がるには指導者の元を離れて、

アウトプットと検証を繰り返すこと、すなわち自分で考えて競技に取り組むことが必要だと思いました。

4つ目は、畦地(投擲・法3)の存在。

畦地は高校時代、全国で一回も負けたことがなかった。

彼とは知り合いではなかったんですけど、彼が慶應に行くと正月のラジオで聞きました。

強い選手が来るなら面白くなる、自分も行こうと決めたんです。

5つめは先輩ですね。

高2の冬休みに慶應に練習に来ていたんですけど、先輩と仲良くなり、そしてその先輩方がマジでいい人たちだった。

さらに、僕が1年生だったときの当時の主将、永田さんは僕と同じ長崎県出身の選手でした。

彼は努力の天才でした。素敵な方で、受験の時も熱心に誘ってくださり、この人と一緒に陸上したい思いがありました。

永田さんの存在は大きかったです。

ー「幹部として、目指す競走部像と、ご自身の取り組みをお聞かせください

一人一人が競技と向き合い、過去の自分を超えていける集団です。

自己ベストを出すことは上に行けば行くほど難しく、大学に入って自己ベストを更新できる人は少ない。

それでも僕らは、それを超えていかなければなりません。

自己ベストを出すためには手段を選ばず、競技と向き合う集団が理想です。

そのための取り組みに関しては、主に2つあります。

1つ目はコミュニケーションです。

1年生の頃から、ブロックの垣根の高さを感じていたので、それをどうにかしたいと思い、

他ブロックの人と意識的にコミュニケーションを図るようにしています。

1回話せば他人じゃなくなると感じていて、僕は同じ学年のほぼ全員と1対1で飯に行ったことがあります。

実際に、話したら仲良くなれたことも何回もありました。

 

 

2つ目は、ブロックの一体感です。

入部当時、投擲ブロックの全学年含めて1年生3人の競技力が一番高かったので、

先輩たちは自分たちをいい意味で放任してくれましたが、投擲ブロックはバラバラでした。

今、最上級生となり、自分たちの持っている技術や知恵を伝え、後輩を育成しなければならないと思っています。

以前は自分のトレーニングだけだったが今は4割くらい後輩に教えている。

競技場にいる時間が延びました。

ブロックとしては、まとまって何かをすることがここ2年は少なかったので、

1ヶ月に一回体力テストをするなどみんなでやることを大切にしています。

特に今の一年生の練習量、体力、運動神経には驚きますね。これからの期待が大きいです。

また、チームみんなで部活全体を盛り上げるために挨拶と元気を大切にしています。

投擲ブロックはうるさいやつ、元気なやつが多いと思います。

この盛り上がっている雰囲気が部全体を明るくしてくれるといいなと思っています。

ー「競技をする上で大切にしている価値観はなんですか?

2つあります。1つ目は『感謝』

感謝は「謝りたいと感じる」と書くじゃないですか。

多分、僕からすると、ありがとうではなくて、謝りたいなと思う人がたくさんいる。

先輩のトレーナーさんやマネさんにいい景色を見せてあげたかったができなかった。恩を返せなかった。

こういうことを謝りたいなと感じる、それが感謝だと思っています。

僕は両親、中高の先生、仲間など色々な人に謝りたいです。

ラストイヤーは、そんな人たちが自分と関わって良かったと思ってもらえるように頑張りたいし、

人としての成長を見せたいです。

 

 

2つ目は『楽しむこと』。大学生は遊びや旅行など楽しいことはたくさんありますが、僕らはそれを捨てて陸上を選んでいます。

トレーニングはつらい。試合も緊張するから楽しいかと聞かれると正直怪しい。

なんでスポーツをやっているのか。自分の中でやりたいという気持ちがある、

すごくきついけどたまーにある一瞬の楽しさがそのつらさよりも勝るから。楽しいからです。

勝てたら楽しい。勝てないとつまらない。自分の得意なことで、自分の力を生かせるフィールドで勝てるのが楽しい。

勝って楽しみたい。funでもenjoy でもなくwin to enjoy勝つことによる高揚をたくさん味わうために競技をやっています。