予選会3日前!~出場選手インタビュー⑤~

こんにちは
3年マネージャーの村上です。

スポーツの秋、芸術の秋、読書の秋の真っ只中ですね。
何をするにも丁度良い、爽やかな気候が続いています。
昔から春の短夜・秋の夜長といって、風流心をそそる今の季節は多くの人々が愛でてきました。百人一首では四季の中で、秋の歌が最も多いことにもそれが表れています。
先日は体育の日もむかえ、何かを新しく始めようとする背中をぽんと押してくれるこの時季に、今年も箱根駅伝予選会の号砲が響きます。

箱根——そこは陸上を、特に長距離種目を志す者にとっては一介の温泉観光地ではなく、粘り合いと闘志が渦巻く戦いの場です。
小説の題材として取り上げられることの少ない陸上競技でも、箱根駅伝に焦点を当てた作品は数多く生み出され、映像化などもされています。
お正月を彩る都県を跨いだお祭りと捉える人もいれば、ぼくたち大学陸上関係者のように2ヶ月も3ヶ月も前から淡々と勝負に備えている者も大勢いるのです。

 

皆さんは大学駅伝を生で、間近で観戦したことがあるでしょうか。
沿道で選手を待ち構えていると、遠く小さく見えるランナーが一人、また一人と瞬く間に近づいてくる。その風圧が道端の落ち葉を舞い上がらせ、応援客の持つ小旗をはためかせる。そして、気付けばすでに選手は目の前を通り過ぎており、汗のにじむ背中を見送っている。選手の地を蹴る足の軌道、リズミカルに振れる腕、なびく襷がスローモーションのようにもコマ送りのようにも感じてしまう不思議な感覚。
走っている本人には長い長い、途方もない孤独な戦いであるのに、応援する者、見守る者にとってはたまゆら、一瞬で過ぎ去ってしまいます。
その刹那に選手に何を伝えられるのか。目の前を通り過ぎるその瞬間に、どれだけ気持ちを並走させられるのか。悔しいかな、走らない者にはそうするしかありません。

 

ただ、応援のもつ力を最も肌で感じることのできる大会も、ぼくたちにとってはこの予選会なのではないかと感じています。
その音エネルギーが、あたかも選手の背中を物理的に押し出しているような、そのくらいの至近距離で声援を送れるのも予選会の特徴です。
慶應の選手が1ヶ月北海道に籠もった成果を、綿密な計画の中で着々と距離を積んできた成果を出し切る手助けを、どうかよろしくお願いします。

さて、今回はチームのエース格である藤井一樹(法4)と根岸祐太(経3)のインタビューをお届けします。

〇よろしくお願いします! 率直に、予選会を前にした今の心境はいかがですか?
藤井:最後の年なので、思い切って、かつしっかりと結果を残さなきゃなって思いです。
根岸:めっちゃ緊張するかと思いきや、まだそれほどのプレッシャーはないです。けっこう楽しみかも。
〇毎年そんな感じなの?
根岸:そうそう。学連選抜狙ってやるぞって思いも例年になく強いし、去年よりも空回りしてない感じ。去年はまだ実力に見合ってなかったかも。

〇今年の長距離は何といっても1ヶ月の夏合宿だと思うんですが、どうでした?
藤井:長かったねえ。ひたすらに長かった。本来なら合宿終わってんだよなあって何度も思ったよ。
〇合宿での調子は良かったですか?
藤井:合宿行く前はかなり悪かったけど、ぼちぼち合宿の中盤以降は走れるようにはなってきてた。根岸は?
根岸:ぼくも良かったですよ。なんせ1070km走りましたから笑。
〇1000超えたのか!
藤井:ぼくも1000は超えてたな。
根岸:合宿通してちゃんと走れてる人は超えてるはず。自分も3日間ぐらいは抜けちゃったけど。軽めに痛めちゃいまして…。
〇藤井さんは基本ずっと好調でしたか?
藤井:そうだね、怪我とかは何もなく終われたのは良かった。単純に、実力としてタレたことはあったけど笑。
根岸:多分30日通してあんまりダメだった練習はなかったかな。それに途中GMOアスリートの方たちと練習させてもらったり、青学の一色選手と走ったこともあった。
〇すごいな!笑
根岸:あれが合宿で一番よかったなあ。
藤井:間違いないね笑。それに、長い間北海道に幽閉(笑)してしまったマネトレの皆さんは本当にありがとうございましたって感じ。
根岸:別海では謎にチャリをたくさん漕いだ思い出が…笑。
〇それはまたどうして?
藤井:自分たちが宿泊してた民宿と、使わせてもらってた温泉がかなり離れてて、そこに行くたびにチャリ往復2km。あれはつらかったねえ笑。
根岸:藤井さんとぼくがぶっちぎりでたくさんチャリ漕いだ自信ある笑。フリーの日は20km以上漕いでた…。
〇もはやそういう合宿やん笑。ロードバイクの合宿!

〇今年は予選会メンバーの選考を学内トライアルではなくて日体大長距離競技会でやりました。それについてはどうですか?
根岸:ぼくは本当に日体でやってもらってよかった。一人旅にならず、最後まで戦って走れたから。
藤井:やっぱり公認の記録会だから、より緊張感を持って臨めたね。
根岸:例年日吉でやるみたいに他ブロックの皆さんからの応援がないのは少し寂しかったかな。
藤井:でもわざわざOGの方が来てくださった! 佐野さん(2015年度の4年マネージャー)とか三山さん(2016年度の4年マネージャー)とか。

〇過去の予選会で印象に残ってることってありますか?
藤井:根岸も自分も初めての出場だった2年前の予選会。スタート前にいきなり土砂降りで、寒すぎてそれが印象強いなあ。
根岸:スタート前に2年連続テレビに映ってることかな笑。
〇ああ! 先頭だから!笑
藤井:去年は根岸がでかいから誰も映んなかったよ笑。今年は屈伸でもしといてくれ!
根岸:印象に残ってるというか、1年目は楽しくて、2年目はきつかった。一言でいえば。
藤井:でも予選会って、他のレースより何より、一番振り返る時間が長いよね。去年の予選会の走りを1年経っても振り返るし、こんなに内容を何度も吟味するレースはないかな。
根岸:真面目か!笑
藤井:いやマジでこれはそう思わない!?笑 だって明らかに普通の5000とかのレースよりも振り返るでしょ!
根岸:予選会の特徴(?)は、スタート前の各校の大応援団の前を流しする気持ち良さ!
藤井:それは分かる笑。
〇今年は慶應の應援指導部もいるから! 期待しててください!

〇お互いの期待するところは?
根岸:ぼくは藤井さんが入学する前からずっとマークして尊敬してて…
藤井:嘘つけ笑。
根岸:本当にお手本みたいに思ってて、藤井さんがいるから競走部入部しようって思ったのは嘘だけど…
〇嘘なんかい。
根岸:それでも高校時代からすごい人だなって思ってたので、頑張ってほしいです! スピードはチームで一番あるんで、ラストスパートにご注目です。
藤井:根岸は言うまでもなく学連選抜。
根岸:プレッシャーかけてきますね笑。
藤井:根岸には期待しかしてないけど、もし根岸が失敗したら自分が学連選抜入るよ、くらいの気持ちで!
根岸:じゃあ62分切ってくださいね!笑
藤井:62分半で許して笑。根岸はもう間違いなく選抜10番のボーダーに食い込むから、任せた笑。
〇1月2日か3日に見られるのかあ!
藤井:もう絶対応援行くから絶対頑張ってほしい。5区だよね。5番以内に入って5区走ってほしい。
根岸:ほんと、実際走るんだったら5区がいいですね。やっぱ走るなら箱根駅伝を象徴してる5区でしょ。
藤井:湯本の辺りに前泊だな笑。
根岸:逆に期待するとこ、学連以外にないですか?笑 印象とか。
藤井:印象?笑 まあ根岸は普段ボケーっとしてるし、だらしないなって思うかもしれないけど…
根岸:ひでえなこりゃ笑。
藤井:いや本当に陸上に関しては真面目に考えてる。これは自分が保証する。
根岸:ぼくが真面目に陸上の話した時間なら藤井さんが一番長いですよね。それは間違いない。
藤井:そう、だからそういうふうに話した時間が多いからだと思うけど、本当に根岸はすごく考えてる。走りについて。才能ももちろんあるんだけど、考えて練習してるのが伝わる。それが強さの秘訣だし、これは自分も他の部員も見習わないとなと思う。
根岸:これだけ藤井さんと話し合ってるんで、腹割って自分の考え伝えられるし、練習でミスっても互いにいじれるし笑。

〇同じマネージャーから見ても長距離専属マネージャーの林と渡部の頑張りはすごいなって思うんですが、その2人と、そして保科コーチへ何かあれば。
根岸:マネージャーの2人に関しては、すげえの一言。
藤井:そうだね。ぼくは大学で陸上続けるって考えたときに選手以外の選択肢は浮かばなくて、サポートで携わってる自分っていうのは考えられない。だからそもそもサポートに対する感謝は常にあるし、ましてや1ヶ月の間北海道で付きっ切りになってくれて、その他でもきめ細かく配慮して練習に参加してくれてるのは感謝と尊敬しか浮かばない。
根岸:林は7月のホクレン(北海道で開催)にも帯同してくれたし、有難い限りです。渡部くんは志木高で自分が高3だったときの高1だったけど、まさか長距離マネになってくれるとは。保科コーチは、冗談も言ってくれて、言葉選びがうまいからみんなの心を掴んでる。保科コーチのおかげで合宿1ヶ月間楽しくできました。
藤井:保科コーチがいなかったら、合宿で1000km踏もうなんて思わなかったし、実際できなかった。こんな合宿も実現してなかっただろうし、感謝です。しかもその合宿で自分自身変わったなってところもあるから、それをあとは結果で返すだけだなと。

〇最後にベタですが、改めて予選会への意気込みをお願いします!
根岸:去年より強くなってることは間違いないし、緊張や不安、怖さっていうのは皆無と言っていい。今年は楽しみに、挑んでいきます。藤井さんたちと走れるのも最後だし、みんなでタイム稼いで塾記録出して、笑って終わりましょう。
藤井:チームとしては塾記録を出します。自分自身やれることはやってきたから、力を出し切れば目標に届くと信じて走り切ります。個人的に負けず嫌いなので、走るからには誰にも負けないくらいの気持ちでスタートラインに立つつもりです。
〇ありがとうございました!


(藤井)


(根岸)

 

先日の集合で保科コーチからあったように、そして本人の口からも話していた通り、今回は根岸の学連選抜入りがかなり現実味を帯びてきています。
淡々と、しかし去年よりも自信にみなぎった様子で学連選抜を語る彼の表情は同期として、長距離のエースとしてとても頼もしく、またその背中は大きく見えました。今回のインタビューでは、藤井さんとは最も多く陸上を語っているだけあって根岸の多くの言葉を聞けました。しかし普段の練習では寡黙なイメージもある根岸。全体練習では常にチームの先陣を切る姿が、個人練習では実直に距離を重ねる姿が、慶應長距離や学連選抜への彼の強い思いを言葉でなく全身で雄弁に語っています。

 

この学連選抜というのは、予選会で惜しくも本戦に出場できなかった大学から実力のある選手を選抜してお正月の箱根駅伝に出場する制度です。よってチームは多種多様な他大学によって構成され、本戦での順位は付きませんが、一般の出場チームと同じレースに参加することができます。
根岸は「5区」というのを口にしていましたが、彼の話にもあったように箱根駅伝の5区というのは花形です。実際の大会では東洋大学OBの柏原さんが走っていた区間、『風が強く吹いている』(三浦しをん、2006年)を読んでいる方にとっては「神童」が走った区間といえば分かりやすいでしょうか。
ぼくも箱根には何回か赴いていますが、5区の急峻な坂道は本当に生半可なものではありません。「天下の剣」の名に偽りなし、といったところです。歩いて登るにもしんどい20km以上のコースを、相当のスピードと駆け引きを伴って駆け上がる、そんな区間に根岸は挑もうとしているのです。
5区は、湯本の温泉街、富士屋ホテル、旧函嶺洞門、そして湖面煌めく芦ノ湖と、見所が次々に訪れる区間です。少々気が早いかもしれませんが、ぜひ来年の1月2日に注目していただけたらと思います。

 

また、今回が最後の予選会となる4年生の藤井さんには、ご自身の競走部生活を一言で表していただきました。

『克己心』
今回お話をうかがった中でも、藤井さんの勝負へのこだわり、「克ち」への執念をありありと感じました。
己に打ち克つ心ーー藤井さんの4年間を支えていたものはいつもここに凝縮されていたのでしょう。「自分は陸上というスポーツで勝負の方しか考えられないから、サポートをしてくれるマネトレを尊敬する」と藤井さんはおっしゃってくださいました。しかし、競走部生活の中でずっと熱く迸る心を失わず、直向きに長距離種目と対峙する姿を見せていただき、こちらが圧倒される思いです。
藤井さんにとって慶應長距離の仲間は常に打ち克つべき戦友でありライバルだったのでしょう。その中でも最大の好敵手は他でもない、自分自身だったに違いありません。
最後の予選会、ひと欠片の後悔も残さず、根岸を競り抜いて箱根路を走ってやるというくらいの気迫に溢れた姿を期待しています。

 

ここまで読んでくださった方で、学連選抜と声高に強調していることに違和感を覚える方もいらっしゃるでしょうか。すなわち、「学連選抜を期待している時点で、慶應は本戦には出場しないのが前提である」ということです。確かにそういったご批判を受けることもありますが、そこにメスを入れるのが今年度からスタートした箱根プロジェクトであり、保科コーチの招聘をはじめとしたさまざまな取り組みなのです。
正直、慶應が箱根の本戦に返り咲くのがいつになるかは分かりません。ただ、間違いなく今回の予選会はその道のりへの第1歩であり、また第1歩どころではない大躍進であり得るかもしれないということです。まずは塾記録を塗り替え、箱根路へ1人を送り出しましょう。
創部100周年の今年が新たな競走部への過渡期となるよう、選手は選手の、サポートはサポートの、応援は応援の役割をしっかりと果たして参ります。

 

長文となってしまいましたが、最後までお付き合いくださりありがとうございました。
数多く更新している予選会インタビューもラストスパートです!
ぜひ選手全員の言葉を余すところなく読んでいただき、そして当日は立川の昭和記念公園へいらっしゃってください。
失礼いたします。

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